- 作者: 松尾剛次
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2011/08/11
- メディア: 新書
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私自身、葬式仏教の始まりは江戸時代の檀家制度・宗門改制度だと思っていましたが、実は鎌倉仏教に起源が存在していたことには驚きです。
確かに、鎌倉仏教はそれまでの仏教と異なり、弱者に視線を寄せています。
そういう意味では、彼らを弔うために葬式を執り行うのは当たり前なのかも知れません。
なるほど、彼ら鎌倉仏教の僧侶達によって「死穢観」が変わっていくのは大きなファクターです。
葬送とは、古くはクロマニョン人から行われており、人間的行為の一つと言えます。
死を悼むことは「人間」だからこその行いでしょう。
しかし、古代仏教は死を穢れと見ていた。神事に関わる以上、穢れを排するのは当然と言える。
だが、そこには仏教の慈悲は見えない。
その意味で、鎌倉仏教は仏の「慈悲」を志していたとも言える。
今回の松尾先生の著書は非常にすばらしい。
ただ、いつもの切れ味がなかった。
いつもの快活で、すべてを切り捨てる豪快さが見られません。
そもそも、本書の元になった研究が仏教界向けと考えれば、仕方ないのかも知れないが、なんだかおとなしすぎて、面白いに欠けていました。
松尾先生は仏教史界の破壊者であってほしいのですが。
まあ、それも仕方ありません。
ただ、ちょっと残念でした。