活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

立てよ、国民

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101207-00000071-mai-soci

国際学力テストの結果が公開されました。
気になる日本の順位は多少上昇したそうです。


ただ、順位なんて正直どうでもよいというのがホンネです。
それよりも点数と習熟度の分布です。
これまでの点数と比較してどうなのか、がまず大切ではないのでしょうか。

数学的リテラシー
2000年 557点
2003年 534点
2006年 523点
2010年 520点

読解力
2000年 522点
2003年 498点
2006年 498点
2010年 520点

科学的リテラシー
2000年 550点
2003年 548点
2006年 531点
2010年 529点

こうしてみると、数学的リテラシーが顕著に低下していることが分かります。
つまり、算数の能力が低下している、ということです。
読解力は2003年、2006年は下がったものの、今年は上がっています。ある程度の波はあるものの、一定の能力を保持していると言えます。
科学的リテラシーは大きく落としていますが、低下幅が極端なので次回の結果が出ないことには、明確なことは言えないでしょう。
ここから見えることは、明らかに算数の能力が低下し、科学的理解力も低下している可能性です。
技術立国である日本にとっては致命的と言えるでしょう。


ここから小学校の理数強化が課題であることは明らかです。
どのように理数強化すべきかは考える余地がありますが、何らかの手を打つ必要があるのは間違いありません。


それを前提として。
大学生が多すぎる – アゴラ
池田信夫先生の「大学生数を削減すべき」という提言について考えたいと思います。


池田氏の論旨としては、ホワイトカラーの供給過多であり、大学は市場から労働力育成機関として求められていない、というものです。
高卒がすべき仕事が多い中、労働力だけを考えれば大学生は無用の長物だというものです。


確かに、大学生の数は増えすぎでしょう。
少なくとも、このままではいずれ問題を引き起こすことは明らかです。
日本が目指すべき方向は以下の3つの方向のいずれかです。

  1. 大学数を減らし、日本人の大半を高卒で終わらせる。大卒はエリート、高卒は労働力、という位置づけを作り直す。
  2. ドイツのようにマイスター(技術者)育成コースを作る。東京理科大芝浦工大のような工業大学を技術者育成機関にするか、大学数を減らし、その代わり、高専や高校の工業科・商業科などを増やし、高校進学段階で職業訓練に従事させる。
  3. 日本の産業構造を変え、大学を知識労働者の育成機関と位置づける。


1は高度経済成長の構造に戻すものです。望ましいとは言えませんが、このままだと1の未来が現実ではないでしょうか。
理由は大学進学費用が家計を圧迫しているからです。不況で収入が減少しているなかで400万から600万(私立大学の場合)の出費は家計を圧迫しています。
しかも、そのほかの教育費用がかかっていることも勘案すると、大学へ通わせられる家庭は限られていきます。
必然、高卒が増えていきます。
2はまさにドイツの教育システムです。池田氏が考えているのも、これに近いものでしょう。
3は工業生産を基盤にするのではなく、価値創造を基準にするものです。モノを作って売るのではなく、新しい価値を生み出す産業をメインにすることです。サービス業が一番イメージしやすいでしょう。


私は3が望ましいと考えています。
1が否定されるのはいうまでもないでしょう。
2はある種正しいと言えますが、アジア諸国の学力が上がっていること、工場生産は品質より安さに押されてしまうことから、日本の勝ち目がないことが分かります。
現に世界の工場は中国であり、安さでは中国にはかないません。技術力も一部国民の底上げと日本の技術者の囲い込みで急速に上がっています。


そうなると、日本のとるべき道は知識労働者を増やすことです。
新しい産業を興す人材や知識産業で活躍できる人材を増やすことです。
日本は資源の乏しい国だと以前からいわれてきました。だからこそ、技術力を高めてきたわけです。
今までの技術力は製品生産の技術です。
しかし、今後の技術は価値創造の技術が求められます。
そういう人材自身が世界で活躍するほか日本の生きるべき道はありません。
つまり、知識労働者という人材を海外に売り込むのです。


製品生産はますます労働力の安い国で行われます。
しかし、製品そのものは誰が生み出すのか。そこに新しい価値を付加するのは誰か。
そういうところで活躍しない限り、国土も狭い、何もない日本は世界で生き残ることはできないでしょう。


教育は金も労力も時間もかかります。
しかし、その見返りは何十倍にもなって帰ってきます。
だからこそ、国は教育に力を注ぐべきだし、国民の底上げを図るべきです。


今回の国際学力テストはいい機会ではないでしょうか。