活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

語り得ぬ問題

ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)

ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院 (光文社新書)

私自身、修士卒で、しかも某私立大学で嘱託職員をしていた身としては他人事とは思えない本でした。
確かに、院卒が一般企業に就職しようと思っても、就職先なんてありません。なぜなら、日本の企業は能力給ではなく年齢給が基本だからです。
もちろん、院卒の方が初任給がいくらか高く設定されていることも一因でしょう。
しかし、一番の理由は年齢給です。
そりゃ、22歳の学部卒と24歳の院卒では2年分の基本給の差が出ますからね。しかも、企業的価値観での能力は変わらないとなれば学部卒を選ぶでしょう。


アカデミーの世界でも職がないのは変わりません。
大学の講師なんてあるはずもなく、一部の学問を除いて業界で食べていくなんて不可能です。
私の属していた考古学界は例外で、地方公務員で文化財担当という職があります(それでも十分少ないですが)。
なので、アカデミーにいなくても研究をされている方は多くいました。
ただ、それでも嘱託職員が多いので、状況としては給与面でアカデミーより優遇されているくらいでしょうか。


院内でのいじめや出身大学の問題を論じていましたが、考古学ではほとんどなかったように思えます。個人間ではありましたけどね(苦笑)。
ただ、やはりしがらみは多くありました。先生と学生、先輩と後輩など。
そのあたりはむしろ、硬直した制度的問題と言えるかも知れません。


制度で徒弟制に基づく使い捨て、薄給で酷使、とありましたが、基本、徒弟制がしっかりしていれば薄給(もしくは無給)でも、自分の後釜にすえる処置をしているはずです。そうなっていないのは、徒弟制の問題ではなく、教授の問題ではないでしょうか。


十二分に頷けたのは、職にありつけないのは「本人の能力の問題ではない」ことです。
実際、私が大学で嘱託職員をしていたとき、同僚は優秀な方ばかりでした。
同時に、これだけ優秀な人材が肩書きでは私と同じであることに、将来への不安を感じたのもまた事実です。
40代で、その分野では一流と言える人が私と同じ嘱託職員に甘んじ、結婚もしていない状況は表現しがたいものがあります。
当時は、「これだけ優秀でも研究者としての職(講師や研究員)がないのか。じゃあ、足下にも及ばない私は一生無理だ」と感じていました。
まあ、結局私の場合、能力が足りなかったんですが(笑)。所詮、三流大出身ですから(爆笑)。


なので、その後、地方自治体の文化財担当(嘱託)の口があったんですが、諦めちゃったんですよね。
今思えばもったいない気もします。


アカデミーにいる人間は使えないのか。
結論から言えば、ノーです。正直、一般企業の方が使えない人間が多いです。
数が圧倒的に違うこともありますが、学力の高い人間は総じて能力も高いです。もちろん、全般的に、ではなく、いくつかの能力において、という前提条件がつきますが。
むしろ、修士・博士をどう使うか、それを分からない企業が「使えない」と自らの無能を棚上げしている気がします。


しかし、現実問題として、ポスドク問題はどげんかせんといかん、ですよね。


謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで

金持ちが探偵役の小説は数ありましたが、執事が安楽椅子探偵なんて今までありませんでした。
ですが、本書の一番の面白さは執事がお嬢様の無能さをののしる場面です。


「失礼ながら、お嬢様――この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」
「ひょっとしてお嬢様の目は節穴でございますか?」
「お許しください、お嬢様。わたくしチャンチャラおかしくて横っ腹が痛うございます」


なかなか主人に対して言える言葉ではないですね。
それというのも、このミステリ、ミステリ自体はたいしたことがありません。ミステリマニアなら解けてしまう程度のものです。
それでも引き込まれてしまうのは、そのキャラ性でしょう。
執事とお嬢様のやりとりが絶妙で笑わせてくれます。
軽快な読み口で、ミステリ初心者にも十分に楽しめます。


アスキーメディアファクトリーもあんな中途半端な文庫を作るくらいなら、これくらいしてもらいたいものです。


ACONY(3) <完> (アフタヌーンKC)

ACONY(3) <完> (アフタヌーンKC)

冬目景、好きなんですけどねえ。
でも、ストーリーが相変わらずいい加減ですよねえ。


まあ、そこも含めて好きなんですが。


……っていうか、『オカルト学院』終わり方はアレでいいのか??