活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

光る原石、輝かぬ原石


なかなか面白いな、JUMPトレジャー新人賞。

JUMPトレジャー新人漫画賞受賞作 |集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト

特に今回の『戦下に咲く』はよかった。
少々新海誠的な雰囲気はあるものの、物語の構成が秀逸。


「鎧虫」と呼ばれる異世界からの虫におびえる世界(『ムシブギョー』ではありません)。
それを退治できるのは「花戟使い」と呼ばれる特殊能力者だけ。
普通の高校生だった葉一郎は、「花戟使い」になって戦場に赴いていく。幼なじみの少女を残して。


ここでよかったのは、本編ではすでに葉一郎が死亡しており、彼の「花戟」が幼なじみの花穂に引き継がれるシーン。
伏線がありつつも、そこで葉一郎が死んでおり、「花戟」の能力によってかろうじて現世にとどまっているというところだ。
少女にとっては2度の別れ。
それをうまく演出している。


しかも、物語の半分を二人のデートシーンに費やしており、少年マンガ(特に戦う物語)にありがちなバトルシーンがほとんどない。
個人的にはもっとバトルシーンを減らして、二人の関係性にクローズしてもよいと考えている。さらに葉一郎が死んだと暗示させず、「花戟使い」の彼がなぜか花穂と地元デートをしている展開にする。そうすることで、引き継ぎのシーンがよりいっそう際立つ。


コマの使い方が細かいが、十分に連載作家としてやっていく力量がありそう。いくつかの問題点はあるものの、それを克服すれば連載するのではないか。
ただ、今回の作品では連載は狙えないので、別作品になるだろう。
ジャンプで連載したいのなら、もっと低年齢向けになるか。今回の作品だと高校生・大学生がターゲットになりそう。


JUMPトレジャー新人賞を見て、やはり連載作家はすごいのだと再認識。
文句なく面白いと思ったのは『王様キッド』のみ。
この作者は現在『詭弁学派、四ツ谷先輩の怪談。』でジャンプ連載中だ。ただ、最近紙面の後ろにいるところからあまり人気がないようだ。
個人的には好きなので、単行本が出たら買おうと思っているのだが。
やはり、連載への道のりは厳しいようだ。