活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

やっていることはすべて正しい


勉強には目的があります。
その目的に沿って勉強するからこそ効果が現れます。


英語学習という「民間療法」のウソ/×聞くだけでOK、×単語は文で覚えろ 読書猿Classic: between / beyond readers


このブログに対して、割と批判的なコメントが多いようですが、私は「別に」と思うわけです。
理由は、この内容はあくまで「民間療法」的な英語勉強法に対するアンチテーゼであり、それ以上のものではない、からです。
実際、勉強法なんて千差万別、諸子百家、唯一絶対の方法なんてありません。
しかし、もう少し科学的な根拠に基づいた勉強法がないのか、というのが彼の論旨でしょう。

「英語を大量に聞き流すだけで英語はできるようになる」のウソ


→ 乳幼児が浴びるインプットの量は生後4年間で約17万時間以上。対してどんな英会話教材も、教室での授業も、それほどのインプットは得られない。
・伊藤康允(1997)『カナダのバイリンガル教育』東京:渓水社
・白畑和彦(2002)「研究開発学校で英語に接した児童のその後の英語能力」『静岡大学教育学部研究報告教科教育学篇』第33号,195-215.

→どんなに大量にインプットしても、文法は不正確のまま。
・Pawley, C. (1985) "How bilingual are French immersion students?" Canadian Modern Language Review 42:592-606

→どんなに大量にインプットしても、場面にふさわしい言葉遣いはできないまま。
・Hammerly, H.(1987) "The immersion approach: litmus test of second language acquisition through classroom communicatioon." The Modern Language Journal 71:395-409


これは某教材販売会社に対する批判ですし、

「多読は効率の良い英語学習法である」のウソ
「単語は文章の中で覚えるべきだ」のウソ

→多読は、語彙習得の面から見ると非効率的
→→読んだ直後でも、新出単語の5〜6%しか覚えていない
・Pitts, M., White, H. & S. Krashen (1989) "Acquiring second language vocabulary through reading: a replication of Clockwork Orange study using second language acquirers." Reading in a Foreign Language 5:271-275
・Day, R., Omura, C. & M. Hiramatsu (1991) "Incidental EFL vocabulary learning and reading." Reading in a Foreign Language 7:541-551.

→→読む作業だけで覚えた単語は記憶に残りにくい
・Waring, R. & M. Takaki (2003) "At what rate do learners learn and retain new vocabulary from reading a graded reader?" Reading in a Foreign Language 15:130-163.

→→ 多読で文法力がついたと主張する研究はあるが、検討してみると研究方法に問題があり、とてもそうは言えない
・Nation, P. (2001) Learning Vocabulary in Another Language. Cambridge: Cambridge Universitiy Press.
・須田孝司(2004)「学習者の習得順序と外国語の学習法について考える」『英語習得の「常識」「非常識」:第二言語習得研究からの検証』

は塾・予備校、出版物に対する批判に他なりません。
第二言語習得研究から彼らのやっていることが誤りだ、と科学的に論証しているだけです。
今の英語ブームに対し警鐘を鳴らしている、といってもいいかもしれません。


ただ、冒頭に書いたように何を目的にするかによって、この批判は何の意味もなしません。


例えば、外国人と話したい、受験に合格したい、海外でプレぜーションする、あの子に告白したい、という目的があれば、それぞれに手法も異なります。
単に話したいだけであれば、それこそ大量に聞き流す勉強法で問題ありません。
文法やTPOにあわせた話し方というものは必要ないからです。
もちろん、公式の場で話す、英語を書きたい、というのであれば、それはまた別ですが。


受験に合格したいなら、もちろん、正しい文法や語法の学習が不可欠ですし、多読して文章読解スピードを上げる必要があります。
受験生が文章の中で単語を覚える、というような勉強法をしているのは某Z○くらいです。多くの人はTARGETやDUOなど単語帳を使っています。
受験生の多くは話す必要はありません。それどころか聞けなくもいいんです(センター試験、国際学部の一部を除く)。


海外でプレゼンするなら、話し方やビジネス用語の習得が最優先です。読解スピードは必要ありません。
告白したいなら、もっと簡単です。彼女に情熱を持って「I miss you. I need you. I want to you. I love you」というだけです。
もっとも、それで恋人になれるかは保証しませんが。


すべてに通じる勉強法は単語を覚えることくらいです。
言語習得には「読む」「聞く」「話す」「書く」という習得分野があります。
それぞれに最適化した勉強法をすることが、もっとも効率的な習得方法です。
問題なのは、その目的を考えない勉強法です。
世に出回っている勉強法のほとんどは受験用か日常会話用のように思えます。その目的に限定している限りは、私は間違いだとは思いません。
「英語」習得法だとのたまうから間違いなんです。
むしろ、そこに言及すべきでしょう。


だから、自分が何のために英語を学んでいるのか、それを忘れなければ、あなたのやっていることはすべて正しい。


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