活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

別役のある風景

やっぱり別役実は面白いですねえ。
今日、知り合いの公演を見に行ったのですが、別役の脚本はやっぱり面白い。


何が面白いって、人間関係の妙をついたところが面白い。
『壊れた風景』は、道の途中で人々が繰り広げる何気ない光景なのですが、話が微妙にかみ合っていない。しかも、「あれ」だの「これ」だの指示語が多い。
すごく曖昧な風景です。
ですが、互いに責任の押し付け合いのような、責任をとりたくない態度をとっています。
にもかかわらず、そこにあったピクニックの荷物に手をつけてしまいます。
自分ではない別の誰かが責任をとるから自分には責任はない、といった風です。


そして、やがて全員が共犯状態になり、他人のピクニックセットや料理で和気藹々となります。全員が窃盗をしているにもかかわらず。
ここに別役のすごさがあります。


まさに「壊れた風景」です。


団らんとした風景なのに、それ自体は犯罪行為である。


ラストシーン。
一人の刑事が現れ、ピクニックセットの持ち主がすぐそこで一家心中をしたと告げます。しかも、人数は彼らと同じ6人。
すごくシュールです。
片や人様のもので盛り上がっている一方で、片や一家心中をしてしまう。
それも理由は分からない。


ここに見えるのは日本人特有の責任所在の不明さです。
演劇に日本の姿を仮託する手法は非常にうまいな、というのが正直な感想です。


いやあ、別役の芝居をしてみたいですねえ。