- 作者: 伊藤計劃
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 文庫
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最近、自信を失いかけていた自分の作品に対する嗅覚が、まやかしではないことを確信するに至りました。
ここ数年、どうも自分の感覚が鈍ってきたな、と感じてきたのですが、やはり感覚は鈍っていなかったようです。
『虐殺器官』は2007年に刊行されたもので、早川書房のJコレクション・シリーズの一作です。
出た当初、「面白い」と感じていたのですが、この時期、どうも自分の感覚に対し、違和感を感じていたので買うのを断念していました。
しかし!
やはり、面白い!
「虐殺の文法」という発想は斬新でした。
確かに、本文中で明確に「虐殺の文法」とは何か、と明かされていませんが、私はそれでいいと思っています。
「虐殺の文法」とはいいかえれば、「虐殺の雰囲気」であり、それを醸し出しているのが人々が語る言葉の中に存在する、のでしょう。
もし、それが自由に操れたら。
その発想から始まったのではないでしょうか。
それだけでなく、テロや貧困など現代に残された課題に対し、ジョン・ポールがいかなる行動を起こし、それに対してシェパード大尉がどう行動したのか。
その結果は現代に対する一つの回答ではないだろうか。
大森氏や山岸氏が述べている通り、「世界水準のSF」といえるだろう。
なぜ、あのとき買わなかったのかと後悔するほどです。
素晴らしい作品に出会えたことと同時に、自分の感覚は正しかったと証明されました。