活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

それはまた、夢のまた夢

鋼の錬金術師』が累計4000万部を超えたそうです。
いやぁ、売れ筋のコミックは格が違いますね。


で、ふと思ったこと。
売れっ子作家は印税そのほかで儲けていますが、それ以外の作家はどうなんでしょうか。
この世界に入れば、誰しもが一度は夢に見る印税生活。
その実体とはいかなるものか。


と、まあ、下世話なことを考えてみました。
累計4000万部ということですが、一冊当たり約400円、印税はおおよそ10%として考えてみましょう。
すると、一冊40円の印税が入る計算です。


4000万部×40円=16億円!


おおよそ8年間連載していますから、1年あたり2億円の印税という計算になります。
ただし!
この400万部、おそらくは公称(出版社による公表数)だと考えると、実際は返品率を考えなければなりません。
多いと、50%(つまり、半分)が返本される出版業界、人気作品と差し引いても、20〜30%程度の返本率を見込んでみます。


すると、


4000万部×0.75=3000万部


となり、


3000万部×40円=12億円


さらに税金で半分近く持っていかれることを差し引くと、8年間で6億円。年間7500万円といったところでしょう。
もちろん、制作にかかる経費やアニメ化などの版権を考えると、実際の数字はまったく異なりますが、印税のみで計算すれば売れっ子作家で年収が億に到達するかしないか、といったところでしょう。


では、売れない作家の場合はどうなのでしょう。
売り上げ部数が分からないので、オリコンランキングの数値から推定しますが、おおよそ一巻につき10万部以上売れば、売れっ子作家であると認定しましょう。
週刊誌なら3カ月に1度のペースでコミックスを発売します。つまり、年間4冊の発刊と考えます。
1冊の値段は『鋼の錬金術師』と同じ400円に設定します。
この前提条件から、以下の計算が導き出せます。


40万部(10万部×4冊)×40円=1600万円
1600万円×0.7(所得税が約30%)=1120万円


費用対効果がどうなんだ、という考えを無視すると、1000万プレイヤーですから、ぎりぎり売れっ子作家までは悪くありませんね。


極論を考え、一巻あたり1万部だったらどうでしょう。


4万部×40円=160万円


……間違いなくワーキングプアです。生活すらままならぬ状態ですね。
しかも、10万部と1万部の場合、返本率を考えていませんので、ここからさらに引かれると考えてください。
さらに、印税は必ずしも10%ではなく、人によって上下します。


ここから印税生活なんて夢のまた夢、だというのが分かります。
印税生活ができるのはほんの一握りだと。
だから、多くの場合、アニメ化や映画化、ゲーム化などメディアミックスをすることで、版権で稼いでいるわけですね。作家も出版社も。
しかも、今年一巻あたり100万部を超えたのは『鋼の錬金術師』『ワンピース』『ナルト』『NANA』『のだめカンタービレ』の5作品だけだそうです。


マンガだけで論じていますが、出版業界全体に言えることでしょう。
もはや書籍だけでは売り上げが立たない時代にきています。だから、出版社はこぞってメディアミックスを展開しているのでしょう。
かの集英社も当初はメディアミックスに懐疑的でしたが、『ドラゴンボール』の成功に方向を180度転換したそうですし。


こうして、実際の数字にすると、印税生活なんて作家全体の1%程度ではないでしょうか。
作家とは、お金よりも夢を追いかけられる人でなければやっていけませんね。