- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/09/25
- メディア: 文庫
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歴史上の事実として、確かに夏目漱石は国費を使った留学生としてイギリスへ留学していました。
結局、そこの気候風土になじめず、精神病を患い、絶望のうちに帰国します。
その後、どうもイギリスがとことん嫌いになったようですが。
夏目といい、森鴎外といい、どうして海外でろくな事をしないのでしょうか。
まあ、それは関係ありませんが。
その事実をもとに、今回の物語が構成されているようです。
今回も随所にどんでん返しがあり、そこは十二分に楽しめました。
歴史上の事実を織り込みながら、フィクションを組み立てていく。
この手法はできるようで、かなりの知識と技量が必要です。
しかし、本作のナツメさん。あまりにも狂言回しすぎやしないでしょうか。
いくら狂ったからといって、あまりにも可哀想な扱いです。
結局、最後の最後まで推理は当たらないし、恋した女性には振られるし(笑)。
役回り的に仕方ありませんが、まあ明治の大文豪をよくもまあここまで、と思います。
さすが柳さん(苦笑)。
改めて、この人のすごさはミステリのトリックではなく、時代背景を織り込んだ世界観だ、と感心させられます。
時代背景と人物関係だけで物語が構成されているといっても過言ではありません。
正直、ストーリーとかどうでもいいですし(笑)。
やはり、そのひとにしかできない「オンリーワン」といえるでしょう。
……ああ、早く『ダブル・ジョーカー』を買わないと。