傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)
- 作者: 夏井睦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/06/20
- メディア: 新書
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パラダイムシフトというのはいつの時代も起こります。
その一つが「湿潤治療」かもしれません。
今まで(というか今も)傷の治療といえば、消毒して乾燥させることでした。
しかし、本書ではそれが誤りだというのです。
その理由は2つ。
ひとつは消毒液は細菌だけでなく人間の細胞をも破壊するものであること。
もうひとつは乾燥させると人間に有害な細菌の活動を活発化させてしまうこと、です。
実際、前者については私自身不思議に思っていたことがあります。
大した医療知識があったわけではありませんが、「消毒ってアルコールだけど、気化熱を利用しているのかな」と漠然と考えていました。なので、細胞にも悪い影響があるのではないか、とも考えていました。
当たらずとも遠からずといったところでしたが、消毒液が実は細胞を破壊する薬剤ということには驚きでした。
そして、何より驚いたのは世に出ている熱傷用の医薬品が実は傷に悪いということでした。
本来、皮膚は常在菌がおり、そのために悪性の細菌の入る余地はありません。しかし、常在菌は嫌気性で皮脂を食料としています。
傷用の医薬品には界面活性剤が入っており、皮脂を奪ってしまいます。そのため、常在菌の生きにくい環境にしてしまうというのです。
本書のすべてが正しいとは思いませんが、今までの常識が違うということに驚きです。
科学的検証を重ねる必要はあるものの、今後傷治療が変わっていくのは間違いないでしょう。