活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

そんなに言うほど?

大学受験参考書の中に、こんな本がありました。
思わず立ち読み(苦笑)。


予備校に行っている人は読まないでください

予備校に行っている人は読まないでください


この著者はかつてT予備校で散々な目に遭い、友人の言葉によって目覚め、見事学習院に合格する。
そして、チューターや塾講師の経験から自ら予備校(塾?)を設立し、成功した立身出世の物語、といったところですね。


このT予備校って……東進ですよね(笑)。
おおよそ10年前にDVD授業をしているところは東進くらいしかありませんし(現在は河合、代ゼミ、大宮など様々な予備校で行われています。ただ、その使われ方は様々)。


それで、気になった点が一つあります。
東進でもハイスクールか衛星予備校かということですが、高1で生の授業をとらされた(本人談)というところから衛星予備校だと思われるんですね。ただ、その室長が社長の海外別荘に招かれるくらい営業成績が優秀、だというのです。この社長が永瀬氏だとすると、衛星予備校ではなくハイスクールのはずなのですが……。


何かというと、東進はハイスクール(=直営校)、衛星予備校(=加盟校つまりフランチャイズ)に分かれています。生の授業をしているところから衛星予備校だと思われるんですね。ハイスクールはDVD授業しかしていないはずですから。
そうすると、言っていることが矛盾します。社長とは加盟校の社長ということなのでしょうか。


立ち読みなんですが、読んでいく中でどうにも著者の過去が誇張じゃないか、という疑惑が生まれました。
200万予備校に使った、と言っていますが、仮に3年間だとすると、東進は1講座7万くらいですから、28講座くらいになります。しかも高2からDVDですから高1の生授業を差し引いても20講座以上は受講しているはずです。東進に通っている(いた)人がいたらわかると思いますが、2年間で20講座はいかに恐ろしい講座数かはお分かりでしょう。


どうにも過去の受験時代の話が胡散臭い気がします。


確かに、東大の合格者数の話や営業成績の話は事実です。東大合格者なんて代ゼミ・河合・駿台Z会・東進だけ足しても入学数を平気で超えてしまいます。当たり前の話なんですよ。林氏がいうような内実がどうかはさておき、普段は河合に通っているけど、Z会で1科目だけとっている、というパターンがあります。河合もZ会も、それぞれ1名とカウントします。しかし、合計すると2名になります。
確かに、林氏が言うように模試だけ講習だけでカウントしているところもあります(Yゼミとかね)。その是非はここでは問いませんが、企業としては合格実績だけが対外的にアピールできる唯一の「広告」です。また、企業なので拡大再生産が基本路線です(これは政経でやりましたよね)。利益を上げるのは当然の行為です(問題はその方法といえますが)。


やり方が問題の予備校もありますが、「広告」「利益」という面からみれば、必ずしも批判されるばかりではありません。また、どこの職員も受験知識が乏しい、としていますが、それは一部であり、総体ではありません。林氏の書き方は受験界全部が、というように受け取られかねません。
しょせん、受験業界なんて利益率の低い業界ですし、中小企業がひしめく業界でもあります。中にはあこぎな予備校・塾がある、これは認めるべきところです。しかし、それがすべてではないこともまた事実です。


林氏は「生徒が『自分は勉強の仕方がわかったので、武田塾をやめます』といってくれれば嬉しい」と述べていますが、それもどうかと。人間的には素晴らしいと思います。しかし、企業家としては失格です。企業は利益を求める組織です。この言葉は利益を捨てる発言です。また、それが高1高2だったら分りますが、高3だったら最後まで面倒を見るのが筋でしょう。


……と批判ばかりを言っていますが、林氏の勉強法は非常に正しいです。
基礎学力の徹底、これは絶対です。自分に合った参考書を1冊完璧にする、何冊も手を出さない、何度も繰り返して記憶を定着させる。
基礎部分を定着させ、そこに応用を載せていく。非常にスタンダードな勉強法です。
そのために、参考書はこの段階ではこれ、次の段階ではこれ、と明記されているのは素晴らしい。
世の中には参考書があふれ、受験生は何をすればいいのか、一人ではわからない状況です。頼れるのは友達や先輩の経験や塾・予備校の先生です。ただ、彼らは風評で参考書に手を出したり(おもに友達や先輩)、授業はできるが参考書研究はしていなかったり(予備校の講師)するので、必ずしも受験生に合った参考書をピックアップできるとはかぎりません。中にはそうでない人もいますが。


なので、林氏のように、この参考書はこういう目的で作られ、こう使えばいい、というアドバイスは受験生にとって非常に有効です。その意味で授業をしなくても、授業と同等の効果が得られるのかもしれません。


ただ、最後に。
結局、林氏の言っていることって、受験業界では非常に当たり前のことなんですね。たぶん、どこの予備校・塾に行ってもほとんど同じことが聞けるはずです。むしろ、それが聞けない校舎はやめたほうがいいです。
なので、参考書は非常に研究されていますが、勉強方法になにか特別なことがあるわけではありません。
また、生での集団授業やDVDでの授業を批判していますが、それぞれに良いところがあります。集団授業は独特の雰囲気が集中力を向上させますし、DVDは何度も繰り返し見られるというメリットがあります。何を選ぶかは受験生が選ぶべきです。簡単に否定できるものではありません。


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