活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

右も左も同じだ

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

新左翼とロスジェネ (集英社新書 488C)

新左翼とロスジェネ (集英社新書 488C)


この二書が日本の未来を暗示しているのではないでしょうか。
『貧困大国アメリカ』は新自由主義の先に、富裕層(=ホワイト)と貧困層(=移民、有色人種)の差が拡大しつつあるとしています。貧困層をターゲットとした新しいビジネスとして「サブプライムローン」があったのだと。
これは今の日本にも当てはめることができるのではないでしょうか。
ただし、アメリカが人種問題に対し、日本は学歴問題ですが。


富裕層(=大卒)と貧困層(=高卒以下)です。
しかし、現状では二つの層は流動的で、完全な階層ではありません。その意味で日本のほうがまだ救いはあるといえます。
もっとも、この二層は徐々に固定化しつつあります。
大学を卒業する、その前までに高額な学費がかかるからです。今や東大に合格する人間の半分が私立であり、その多くが中高一貫校(開成・麻布・武蔵のような)です。つまり、恐ろしく学費がかかります。それをできるのは大卒のエリート層です。


では、貧困層はどうなるのか。
それを示唆するのが『新左翼とロスジェネ』です。
学歴の低い人間ほど「勉強がすべてではない」という信念を持ち、「自分探し」をします。この「自分探し」、言い換えれば自分の存在価値と言い換えることができます。自分が世界に(あるいは特定の集団・人間)必要とされているという考えです。
右翼にしろ、左翼にしろ、あるアイデンティティのもと行動をする集団です。特定のアイデンティティに寄り掛かることで自分の存在価値を見出そうとする人間こそが「自分探し」の人間です。
つまり、貧困層は右翼と左翼の二分化するはずです。
どちらにせよ、敵対する思想を弾圧することによって、自らの思想を正当化することで自らの存在価値を見出そうとします。近年見られる「ネット右翼」もそのたぐいでしょう。


そこに何を危惧するのか。
右翼も、左翼も、行き着く先は「戦争(あるいは闘争)」です。
どちらも貧困層であり、何かしらのアイデンティティに依拠することで存在価値を作り出しています。
そのアイデンティティを正当化するためには、現状を打破する必要があります。つまり、闘争です。かつて左翼思想が唱えた「革命」と言っていいでしょう。
もう一方で貧困層が現状を打破するためには、社会形態を変革しなければなりません。「ガチャポン」とひっくり返さなければならないのです。それができるのは「戦争」です。


日本がアメリカのような道を突き進む以上、富裕層が貧困層を搾取する市場形態は変わりません。むしろ、ひどくなるでしょう。
アメリカでは、貧困層を抜け出す方法は大学へ出て正社員として就職することです。
だが、大学へ行くには資金が必要。しかし、貧困層にはない。
だから、軍が兵士志願を条件に大学資金を提供する形式の募兵制を生み出しました。アメリカ兵士がアフガンやイラクから消えない理由の一つがそこにあります。もっとも、この条件で本当に大学に入学できる人間はほとんどいないそうですが。


いずれ日本も同じようになるでしょう。
その時に、「戦争」が起きないか、不安で仕方ありません。