活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

犬と少女と

チョコリエッタ (角川文庫)

チョコリエッタ (角川文庫)


私はチョコリエッタ。
うそ。
宮永知世子なんていうダサイ名前。
春休み、髪を切った。人が唖然とするくらい短く切った。どこからどう見ても少年になった。女の子なんてまっぴらだから。
うそ。
少年だってまっぴら。
ついでに言えば人間なんてまっぴら。


という一説から始まる本作。
最初見たときは正直「ああ、面倒くさい自分探し的青春小説か」と思いました。
実際その通りだし、間違いではないのだけれど。
ただ、「チョコリエッタ」という題名と俯き加減の少女の絵に惹かれて買ってしまいました。
内容は、さほど面白くありません。
もっと言えば、自分が一番不幸だと思っている痛い子の青春ストーリーです。


ただ、大島真寿美の文体は非常に清冽です。
小気味よく軽く、けれど後味の残る文体は素晴らしい。この青春小説が変に重たくもならないし、心地よい風を吹き込んでくれる。
そこが秀逸です。
また、文章の長さもこれくらいでしょう。
これ以上長いと、ストーリーからぼろが出てしまい、せっかくの文体が台無しになってしまう。
ストーリーには突っ込みたい部分が山ほどありますが、この文体がそれを帳消しにしてくれます。


その点で、本作は読む価値があった。
ただ、これが新人の作品だったならば、おそらく賞はとれないでしょうが。