- 作者: 新潮社ストーリーセラー編集部
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: 文庫
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よくまあ、これだけの作家を集めたものです。
人気作家が一堂に会した中編小説集、それも若手作家ばかり。
傾向にやや新潮ではなく講談社を感じるのは、けっして私だけではないはず。
有川、佐藤、米澤と、これはライトノベル寄り……むしろメフィスト寄り?
巻頭は伊坂幸太郎。
やはり彼は流石の一言。
伏線を幾重にも重ねて、それを徐々に一本にまとめていく様は彼ならでは。
非の打ちようがないというのはこのことを言います。
続いて近藤史恵。
実はよく知りません。作品を見ても普段私が読まない傾向のものばかり。
それを踏まえて。
よくまとまっている作品です。可もなく不可もなく、といったところですね。
面白いんですけど、文章に書かれている以上の面白さのない面白さです。
だから、可もなく不可もなく。
次に有川浩。
好きでした、『塩の街』。
昨今、当たりのないライトノベルの中で久しぶりに良作を読んだ気持ちでした。
が、
最近の彼女の作品傾向は好きではありません。
あの、安っぽいメロドラマのような恋愛小説は。
今回もそうです。
新井素子『おしまいの日』を彷彿とさせる展開。しかし、『おしまいの日』の方が100倍面白いし、芯に突き刺さる。
せめて文体くらい変えてほしいんですけど(読むと理由が分かります)。
4作目は米澤穂信。
この人は好きです。ライトノベルで『氷菓』なんていう味気ない題名をつける時点で萌です。
今回はミステリではなく、ホラーチック。
どちらかと言えば、『犬はどこだ』に近い。ちょっと後味の悪い作品。
この人は好きなんですが、今回の作品はさほど面白くないかなと。
ホラーのような気持ち悪さがあるわけでもなく、心の暗部に触れる作品でもなく。
最近多い、グロテスクホラーからグロテスクと抜いた感じ。
5作目は佐藤友哉。
良くも悪くもメフィスト系。
というか、西尾維新系?
この手の作品(作家)は一歩間違うと、高校の文芸部レベルなんですよね。
この作家がそうではないのは、描ききっているからでしょう。
そうではなければ自分の別作品を、作中で野次っているのはいただけません(人はこれをメタ的というのでしょうが)。
6作目は道尾秀介。
名前は知っていますが、作品を読んだことはありません。
この人も今時のホラー作家が好きそうな描き方をします。どうしてホラーって同じような描き方なんでしょうか。
構成は巧いですが、作品自体は陳腐な素材を使用しております。
だから、いまいちなイメージを受けるんですよね。
最後は本多孝好。
『MISSING』の「傘の自由化」は素晴らしかった。
今回の作品も十二分に面白い。伊坂に次ぐ面白さです。
中編なのですが、長編にもなりうる作品です。むしろ、これから彼はどうなるのだろう、と思わず先が読みたくなります。
あまりにも贅沢な作りですね。
伊坂の作品がそれだけで完結するなら、本多の作品はこれからどうなるのか、それだけでは完結しない作品です。
もしかしたら、別作品として存在するのかも知れませんが、それでも充分に面白い。
この人の美的感覚は好きです。
……『MISSING』しか読んでいないけど(笑)・
しかし、どういうコンセプトなんでしょう、この作品群は。
特に同じテーマを扱うわけでもなく、何か共通性があるわけでもなく。
まあ、売れる人を集めた、って感じ?