活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

娯楽だけの映画に別れを告げて

『チェ 39歳別れの手紙』


チェ・ゲバラ』二部作品の後編です。
キューバ革命以後のゲバラで、ボリビアでのゲリラ活動を追いかけています。
作品は、前回と同様、まったくエンターテインメント性がありません。ほぼ事実だけを淡々と追いかけていく手法です。


ボリビアでの戦いは、キューバとは異なり農民の賛同も得られず、兵士も志気が低い。
その中でわずかな手勢で奮闘するゲバラ


なぜ、キューバ革命は成功して、ボリビアは失敗したのか。
様々な要素がありますが、大きな要因は政治家がいなかったことでしょう。
キューバのときは、カストロという政治家がいました。


英雄は確かに人々を惹きつけますが、英雄たるがゆえに、その大志は成就することはありません。
源義経しかりジャンヌ・ダルクしかり。
英雄とは、成就することなく、それでも諦めずに、最後に悲劇を迎えるから、英雄となるのでしょう。


けれど、悲しいかな。
「革命」が成就するためには、政治家がいなくてはならない。
だから、「革命」は常に政治家の手に収まる。それ故に、「革命」は革命の本分を忘れてしまう。


『チェ 39歳別れの手紙』では、その一人であるチェ・ゲバラを用いて、観客にテーマを一切委ねた作品です。
作り手の主張を極力排除しています。それゆえに、どう受け手が感じるかというところにかかっています。
昨今の作り手の主張の強すぎる作品からみれば、非常に美しい作りです。
ただ、それには受け手の能力も必要です。
難しいですが、意欲的な手法だと思います。