活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

独白するは愚痴ばかり

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)


『独白するユニバーサル横メルカトル』
題名は素晴らしくエッジが効いているんですが。
確かに、この作品が出たとき、その奇抜な題名と表紙で読んでみたいな、と思っていたのですが、ハードカバーの時には手が出なかったので、文庫に手を出してみました。


ですが、正直世間が騒いでいるほど面白くはなかった。
ホラーのためにグロテスクなのは仕方ないとしても、短編作品として完成度の低いものばかりです。
辛うじて面白さがあったのは、表題の「独白するユニバーサル横メルカトル」と「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」くらいですかね。


まず、この作品群の面白さは「文体」にあります。
というか、この人から文体をとったら何も残りません。その意味で、日本推理作家協会賞をとったのは理解できます。いかにも文学賞好きする文体です。
しかし、ストーリーがめちゃくちゃなんですよね。必然性を感じさせない流れがよく見受けられます。
なにより先が読めてしまう展開に辟易です。
「Ωの聖餐」しかり「無垢の祈り」しかり「オペラントの肖像」しかり「卵男」しかり……って、半分先が読めてしまう!
しかも、その先が読めるのが星新一「地球から来た男」みたいに、分かるがゆえに面白味や怖さがあるわけではないのです。


この人の作品を見ていると、朱川湊人を思い出します。
あの作家も同じなんですよね。


ただ、「独白する〜」は設定が秀逸です。地図が喋る、ありえない。ましてや主人に刃向かう、ありですか? でも、それは面白かった。
「怪物のような〜」はMCとココのやりとりが妙でした。これをもっとしっかりとやれば、きっと面白い作品になったと思うのですが、他の作品には見られなかったので、ダメなんですよね。


どうでもいいんですが、最近のホラーってこんなのばかりな気がします。
たいしてホラーを読んでいませんが、ホラー業界は硬直しているのではないでしょうか。だから、面白い作品が最近見られない。
もう少し頑張ってほしいものです。