活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

強さを持つものへ

[小説]強さを持つものへ

されど修羅ゆく君は (徳間文庫)

されど修羅ゆく君は (徳間文庫)

愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫)

愛と悔恨のカーニバル (徳間文庫)


打海文三氏の両作品。
どちらの「戸川姫子」という少女を主人公にした作品です。
犯罪を犯した人間が戸川姫子と出会い、彼を姫子が好きになることから事件が始まります。そこにアーバン・リサーチという探偵社の人々が関係していくのですが、面白いのはストーリーそのものではありません。登場人物たちの強さです。


特に、この姫子の精神的強靱さは目を見張ります。
13歳にして、犯罪者(本人がそう認識する)と分かった男に恋をします。しかも、彼が警察に追われていると知りながら、警察に何も証言しなかったり、あまつさえ彼を助けようとします。そのバイタリティーや、とても13歳とは思えません。


他にも、アーバン・リサーチの鈴木ウメ子の達観ぶりもすごい。
『愛と悔恨のカーニバル』で、殺人を犯した翼の犯罪理由について、そんな常識なんて壊しちゃえばいいのよ、と言い放てる豪放磊落さは圧倒的です。
他にも同様な人物が打海作品には多く登場します。
それこそが打海作品の面白さの源泉です。


『愛と悔恨のカーニバル』での最後で、姫子が求婚してきた「整理屋」に言い放った言葉が、まさに彼女そのものと言えるでしょう。


「もちろん。おまえは俺の運命の女だ」
 姫子は次の言葉を甘く言った。
「もう処女じゃないのよ」


この、「甘く」言ったところが、また読者をにやりとさせます。
これだけ迫られていて、それでもなお、こんな台詞を吐ける姫子の強さがうかがえます。


いやぁ、打海作品はやっぱり面白い。