活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

空に何があるんだい?


やっぱり、森博嗣は『スカイ・クロラ』的な作品の方が面白いですね。
本作はいわゆる『スカイ・クロラ』シリーズの間隙を埋める(謎を解く)短編集となっています。
『伯爵探偵と僕』よりも絶対的に『スカイ・イクリプス』がお薦めです。


作品としては、何も起きないに近い構成です。
何も起きないけれど、何かが起きている。演劇で言うところの「不条理劇」に近い作りです。
個人的に、こういう作品は大好きです。
作家のセンスと主義を感じられます。


本書の「ナイン・ライブズ」は特に好きです。
あのティーチャーが何を考え、どういう主義だったのか、それが明らかになる物語です。
なるほど。どうして彼が現場主義を貫いていたのか、思わず納得します。


本当に、森博嗣はこういう作品を作ればいいんです。
世の中に迎合する作品を作る必要はないです。もともと自分の工作室がほしくて、賞金目当てでメフィスト賞に送ったのが作家の始まりですから、好きなことをすればいいんです(笑)。
もちろん、売れるためには世間に迎合すべきですが、ファン層を獲得しているなら、その必要はありません。もっと好きかってやって下さい。


いや、イイ作品でした。