活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

封建制とは何か


封建制の文明史観 (PHP新書)

封建制の文明史観 (PHP新書)


封建制の文明史観』
法制史からも中世史からも見ても、封建制とは何かを考えるうえで非常に有益になる学史です。
しかし、学史以上でも以下でもない。そんな著作です。


確かに、「封建」という言葉は曖昧に使用されてきた面が多々あります。
そもそも中国的封建制とゲルマン的封建制を同一に語っていいものか、学問上でも無自覚な部分がありました。
その定義を意味づけるきっかけとして、本書は意味があったと考えられます。


しかし、本書からは筆者が何を言わんとしているのかがまったく分かりません。
ただ、学史を作り上げただけ、と言いきれるほどです。
学部生のレポートなら及第点でしょうが、研究者の著作とは言い難いです。


研究者に求められることは、一歩でも最先端を行くことです。
学史はそのための基礎固めです。
もちろん、学史をおろそかにする研究者は研究者と言えません。しかし、学史はあくまで基礎論であり、そこからどう持論を進めていくのかが研究者と言えます。


その意味で、本書は学史止まりでした。
意義のある内容に触れているだっただけに非常に残念です。