活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

クドリャフカ、あるいはライカと呼ばれたイヌ


古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』。

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか?

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)

ベルカ、吠えないのか? (文春文庫)


ここには20世紀がある。
第二次世界大戦の日本・アメリカから始まり、ソ連の崩壊に連なるイヌからみた歴史だ。
いや、イヌの歴史といっても過言ではない。
もちろん、イヌの発展の歴史ではない。イヌの進化の歴史であり、イヌがイヌとして歴史を刻んだ、その最初といってもよい。


これはもはや小説ではなく現代史だ。
大戦を越え、冷戦下の東西陣営の歴史をたどり、そこでのイヌの軌跡をたどった作品だ。
人間の歴史に翻弄されながら、あるいはまったく影響されないイヌたち。
アリューシャン列島にいた4匹のイヌたちが、イヌたちの血が東西に広がり、そして一つへと収斂していく、その流れこそが現代史だ。


アリューシャン列島の島から20世紀が始まり、そして、終わる。再び21世紀に訪れるために。


この作品に賛辞はいらない。
読んで初めて、その価値を知る。
それ以外に言葉は不要だろう。