『夏の名残りの薔薇』、読みました。
相変わらず恩田陸は面白いですね。
夢なのか現なのか、その境界線を彷徨う物語を描くことの多い恩田陸ですが、今回も同様です。多視点三人称のストーリー展開は毎回のこと。物語の核心をぼかしながら、外枠を埋めていく手法は相変わらず見事です。
この物語はミステリなんですが、犯人探しが主ではなく、むしろ関係者の心理こそが主題です。謎がいくつもちりばめられ、その中心に今回のミステリがあるわけですが、それ自身は正直どうでももいいのです。むしろ、そこに至るまでの登場人物達のやりとりこそが問題となるわけです。
こういう手法は小説ならではですし、きっと映像化したいけど、映像化したらつまらないんだろうな、とも思います(苦笑)。←苦笑の意味は本作をご覧下さい。
ハズレがない。
それこそが恩田陸の最大の特徴ですね。