久保寺健彦『みなさん、さようなら』を読みました。
本作で第1回パピルス新人賞を受賞しています。また、別作品にて日本ファンタジーノベル大賞優秀賞も受賞しています。
- 作者: 久保寺健彦
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/11
- メディア: 単行本
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一言で言えば、「団地ノスタルジー」です。
いわゆる団塊ジュニア世代が多く過ごしたであろう団地を舞台に、団地という立地に郷愁を感じる作品です。
良くも悪くも、それが本作の魅力です。
一人の、団地から出られない男の物語です。中学生から30歳になるまでの話で、その間に起きたことを団地から見える時代背景と共に語っていきます。団地から社会を見る、その視点が非常に面白い。
しかし、一人の男の物語としてはもの足りません。
その点で言えば、『裸者と裸者』の方が上手でしょう。ダメ男で言えば、『NHKにようこそ!』の方が面白い。だから、一人の男の物語としては落第点です。
むしろ群像劇的に、一人の男を中心としながらも、団地に住む同世代が活躍する物語の方がより入り込めるし、時代性を映せたでしょう。
もう一作、『ブラック・ジャック・キッド』も読んでみようと思いますが、これも同じようなノスタルジー作品であれば、この作家を追うのはやめます。