追記。
『文学賞メッタ斬り!』の中で、何と言ってもいいのは、メフィスト賞と日本ファンタジーノベル大賞を評価している点です。
メフィスト賞はさておき(もはや言うまでもない)、日本ファンタジーノベル大賞は意外に知られていません。というか、人によってはライトノベル的な文学賞と思っている人も少なくありません。
そうじゃないんです!
大森さんも言っていますが、何と言っても第1回酒見賢一『後宮小説』でしょう。これがこの賞の行く末を決めました。
- 作者: 酒見賢一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/04/25
- メディア: 文庫
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この作品は、架空の中国王朝の後宮で起こる出来事に焦点を当てています。いわば、伝奇小説なのですが、面白さはそこにありません。面白さは作品の世界観です。もちろん主人公のキャラもいいのですが、後宮での人間関係、その背後にある世界観。完敗です。
しかも、書き出しが「腹上死であった、と伝えられている」ですよ。何かといえば、先帝の死因が腹上死で、そのために新しい皇帝が即位し、それに伴い新しい后・女官が後宮にはいるわけですが。
かれこれ10年以上前の作品ですが、あれがきっかけで、私の新人賞熱がわき上がりました。あの作品との出会いは本当に鮮烈でした。