やはり、小松和彦はすごいなと再認識。
妖怪学の大家である小松氏の『妖怪学新考』を読んだのですが、彼の論理と着眼点はすごいなと感心します。
『憑霊信仰論』で「ついている」「ついていない」という運不運の概念を民俗学を用いて見事に論じて以来、学問としての妖怪を見事に築き上げています。
元来妖怪というと、どうしても好事家のものというイメージがあり、学問として成り立たない趣がありました。私自身も妖怪を生み出す人間の心のメカニズムや社会的背景に非常に興味はあります。特に江戸期以降の「善悪」を離れた妖怪達──怪談としての妖怪達に非常に関心がありました。西洋では化け物は善悪でしか語られないのに、どうして日本ではそこから外れた存在が誕生したのかと。
また、神話に登場するヤマタノオロチが山の神であり、鍛冶と深い関わりがあることをいつか論じたいなと思っていました。ですが、それはすでに論じられて少し残念です。
西洋の悪魔が「契約」を重んじるのが西洋の価値観に基づいているのに、ちょっと面白さを感じています。神様でさえ人間と「契約」しているのですから、旧約・新約と。
広い意味での妖怪学は充分に学問として成り立ちます。それを初めて大成させたのが柳田国男であり折口信夫です。しかし、それは民俗学の一分野にすぎませんでした。柳田氏を批判し、新しい妖怪学を作り上げたのが小松氏です。
妖怪は少し前からブームですが、その中で妖怪を通じて人間の心理や社会背景を論じるのは少数派とも言えます。小松さんにはがんばってもらいたいところです。