活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

天使は微笑まない

 ようやく笠井潔『バイバイ、エンジェル』を読み終わりました。
 ……長かった。そんなにページ数はないのに(いや、それなりになるのかな?)、読み進めるのに苦労しました。なにせ文章が硬い。しかも、観念的表現が多い。


 確かに王道的本格推理小説だけあって、内容的には非常に面白いです。ただ、作者の年代が年代だけに、非常に学生運動やアングラの臭いが鼻につくんですよね。この世代によく見られる、知的なのだけれど観念的で決めつけ的な強引さ、とでも表現すべきものが、この作品にも見られます。


 作品は非常に緻密にできていますが、海外小説のように淡々と物語が進む形式は好き嫌いが分かれるところです。また、キャラクタは魅力的ですが、あまりにも哲学的すぎる面もあります。まあ、哲学を学ぶ学生ですから(苦笑)。
 全体的に推理小説としてはよくできています。高いクオリティです。ただ、ラストの哲学的禅問答(禅問答自体が哲学的ですが)は笠井の評論家的な部分を表しています。


 もう、あの感じ。50〜60代がもつ特有の知的高慢というか詭弁というか、あれが私には好きになれません。確かに物語は面白い。それは認めますし、疑いようがありません。
 でも、そこに流れる哲学が私には我慢がなりません。
 そんな感想です。