活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

諸子百家鳴動し、日本は動くのか

茂木健一郎 @kenichiromogi さんの日本の就職連続ツイートとその反響 - Togetterまとめ

茂木先生が発した言葉が各所で異論反論オブジェクション(古っ)しているみたいですね。
個人的な意見はまず置いておき。


まずは茂木先生への反対論者から見てみましょう。
池田信夫 blog : 大卒はなぜ職にあぶれるのか
新卒一括採用は企業にとり最高の制度。 - 雑談の達人
池田先生はそもそも大卒の増加により、大学生の質が低下している。だから、就職できない人間が出てくるのは当たり前だ。という意見です。
もう一方はそもそも日本企業は歯車が欲しいのであって、異能たる存在は必要ない。だから、新卒一括採用は正しい、という意見。


池田先生の論に対し、反論しているブログを見てみましょう。
大卒者の就職難に関する池田信夫氏の議論について - 同志の妄想放送局
彼の論では、国立大や早慶でも就職できない人間がいる。しかも、今や大学で学んだことを企業が否定している状態だ。また大卒率は先進国と比べても決して高いものではない。ゆえに池田氏の論は成り立たない。というもの。


この大学の学業を企業が否定している現状。これは「雑談の達人」が論じている根底にあるものと同じです。
企業は有能な人材が欲しいのではなく、都合のよい人材が欲しい。だから、何も知らない新卒を採りたがるという論法です。
中途採用だと、ほかの企業を知っているだけに、自分の思い通りにならないですからね。
http://d.hatena.ne.jp/tazan/20070330#p2
そのあたりは、このブログで論じられているとおりです。


さて、そんなわけで私の意見。
日本企業が都合のよい人材(まさに材料)を求めているのは事実でしょう。
特化した能力を持つ人材を掛け合わせるのではなく、均質な人材を都合のよいように使ってきました。事実、日本の企業は職務の概念が弱い。日本はセクショナリズムだ、なんていわれている割には、個人が様々な業務に携わっています。
それに対し、アメリカは完全なセクショナリズムで、与えられた職務以外をすることはありません(一部を除き)。


そのため、茂木先生が例に挙げている波頭亮さんの例は、日本企業から見ればガンみたいな存在であり、無能・厄介者の最たるものでしょう。
日本企業は彼のような存在を求めていません。
日本企業が求めているのは、義務教育で能力開発された体育会系の若者です。
ある程度能力があり、なおかつ先輩・上司に対してはハイかイエスでしか答えない存在。
まるで軍隊ですね。
実際に経営者は企業を軍隊組織に見立てている人もいます。


このように発言していますが、私は日本の新卒採用を否定しています。
その理由のもっとも大きな部分は人事部・人事制度の欠陥です。
「他山の石書評雑記」で言っているとおり、人事は大学での学業を否定しています。だから、どこの学部を出ても何の影響もありません。問題はどのランクの大学を出たか、ということです。
つまり、個人の能力なんて見ていません。大学から見た推定ポテンシャルを見ているだけです。
だから、「東一早慶」なんて言葉が生まれるわけです。とりあえず、上からとっていけば安パイだ、と。しかも、失敗しても責任逃れできます。


これは人事部・人事制度の構造的欠陥です。
人事が「俺たち、人材を見る目がありません」と言っているようなもの。
その中でとんがった優秀な人材が価値を持つはずがありません。
私は自分の校舎の生徒には、こう言っています。「企業は大学名しか見ないよ」と。


茂木先生は現状を踏まえなければ正論です。
私自身は諸手を挙げて賛成したい。
しかし、今の日本には優秀な人材を生かせる場所がありません。
歴史をみても、日本の優秀な人材はろくな目に遭っていません。だから人材が流出するわけです。


反対論者はその点から現実を見ろ、と主張していますが、もはや現況が破綻しているのに、いつまで現状維持を決め込んでいるんでしょうか。
これまでの日本の人事における構造的欠陥がどうしようもないところまで来ているのに。
日本の人事システムについて(内田樹の研究室)
内田先生が言っているとおり、この採用制度は若者を疲弊させるだけです。
これから日本を支える人材をいじめて何が楽しいんですか?


では、なぜ日本企業はこの人事制度をやめないのか。
先述したとおり、考えない従順な人材を集めるためです。
これは結論すれば、上の世代の既得権益を守るためです。
もし、本当の能力主義になったら、バブル世代のような人材は一般職へ追いやられます。
正直、今の20代の方が優秀かも知れません(というか優秀なのが結構いるんですよね。うちの会社を見ると)。
そうなると既得権益は失われます。
それを恐れているわけです。はっきり言えば老害です。老兵は死なず、ただ立ち去って欲しいものです。


今の日本は老人が若者に不幸をまき散らしている状態です。
そんな状態で「若者よ、立ち上がれ」と言っても絵空事です。


もちろん、すべての老人が悪く、すべての若者が正しいわけではありません。
しかし、人事制度においては明らかに既得権益を持つ人々の人災です。
理想主義の正義の味方でもなく、現実主義の傍観者でもなく、改革・行動しなければいけません。


……ほんと、変わらないといけないんですよ。