- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/09/29
- メディア: 文庫
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最近、米澤氏はダークサイドに傾きすぎではないか、なんて疑いを抱きます。
だめですよ。そっちはシス卿がいます(笑)。
『犬はどこだ』あたりから、暗黒面を押し出した作風に切り替わりつつありました。
それ自体は問題ないのですが、どんどんと救いのない方向へ行っている気もします。
本作を読んだとき、感じたことは打海文三『ぼくが愛したゴウスト』と同じものでした。
何気なく生きている人間が、突然価値観を打ち砕かれる世界へ落とされる。
そこで「生きる意味」について考えていく。
異世界ものでの典型とも言えますが、混迷を極める現代にこそ必要な論点ではないでしょうか。
「私」という視点からみたものと「他人」という視点からみたものは同一ではありません。
むしろ、それを比較することで事実が浮かび上がってくることもあります。
私たちが普段使っている価値観は絶対的なものではありません。
しかし、それに気づける人はわずかです。
とくに特定の社会や会社にどっぷり浸かっている人間はなおさらです。
環境が一変しない限り、変わることはありません。
それはまさに「コペルニクス的転換」でしょう。
本作に戻って。
ラストシーンは本当に救いがないな、と思います。
現実は変えられない、そんな作者のニヒズムを感じます。
もっとも、本作でのやり取りは一体何だったのだろう、とも感じてしまいますが。