活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

北京、ハルビン、東京


今日、京劇『ムーラン』を観ました。
ディズニーの『ムーラン』を京劇にしたようなものだそうです。
実は、京劇をよく分かっていません。いわゆる歌劇の一種のようですが、ミュージカルに近い気がします。
当然、全編中国語だったので、よく分からなかったのですが(字幕はありましたが)。


今回初めて観たのですが、正直ストーリーはなんら面白くありませんでした。
しかし、動きはすごいですね。あの軽やかな立ち回りは「すごい」と感心しました。時代劇でいう殺陣が非常にスピーディーで圧倒されました。雑伎的な動きもあり、エンターテインメント性もあります。
鞭が馬を表しているなど、日本で言う歌舞伎のように決まり事があるようです。それが分からないと、ちょっと楽しめない部分もあります。


ただ、2時間は長かったですね。
疲れていたこともあり、少し寝てしまいました。
しかし、最後の対決からラストシーンまでは展開も動きもよかったです。それは面白かった。


実はストーリーが面白くなかった、と評価しましたが、それは少し誇張されている感はあります。
それは、移動中に打海文三ハルビン・カフェ』を読んでいたからです。


ハルビン・カフェ (角川文庫)

ハルビン・カフェ (角川文庫)


この作品は素晴らしいですね。
本物のハードボイルドです。言い方が少し違いますね。新しいハードボイルドです。
これまでのハードボイルドは渋い主人公の一人称で展開しますが、これはその主人公をとりまく人物が展開する三人称の物語です。
難民が押し寄せ、マフィアが形成された結果、治安が悪化したが発展した北陸の架空港湾都市、海市。そこで起こった警官による報復テロル、その地下組織Pを巡る物語。
最初はバラバラだったピースが一つの人物に集約していく、その展開の仕方は打海氏の手腕ですね。解説で大森望が書いている通り、この作品を書くための、一文当たりの労力は相当なモノだと分かります。近年の小説でまれに見る作品です。
一文にこれだけのエネルギーが込められ、なおかつ新しい試みが成功した、希有な例でしょう。


そんな作品を読んでいたので、『ムーラン』が陳腐に見えたのかもしれません。