活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

活字の海におぼれて

ここ1週間で読んだ本。
小杉泰『イスラームとは何か』(講談社現代新書)と岡嶋裕史『ウチのシステムはなぜ使えない』(光文社新書)。
我ながらジャンルを問わない読み方だな、と思います。


イスラームとは何か』はおおむねイスラームの歴史を追いかけながら、イスラームイスラーム社会がどのようなものか説明しています。
だいたいは私も知っていることでしたが、共同体(ウンマ)が思っていた以上に力を持っていたことを改めて知りました。我々が思っている世論より具体的な力を持っています、イスラームでは。


スンナ派シーア派も漠然とイマーム(導師)の認識の違いと考えていましたが、むしろ社会的・共同体的な背景を持っています。


この書の論理展開に従えば、今イスラーム社会で起こっていることは、宗教改革ではなく社会改革と、西洋化(近代化)の失敗になります。なるほど、確かにそう考えると、すんなりいく部分もあります。


その辺を含めて、この本はスタンダードなイスラーム入門書でしょう。


さて、『ウチのシステムはなぜ使えない』。
面白いですね。何が面白いって、知っていましたが、いかにIT業界が壊れているか、ということです。
一番の問題は意思疎通ができていない、ことでしょう。もちろん、標準化がなされていない、アーティスト気取りなどありますが、コミュニケーションの欠如こそがIT業界の病巣です。


しかし、それはIT業界にとどまりません。私の属する教育業界もまたそうです。同書で述べているように、建築業界なら徹底した標準化がなされているために、意思疎通がうまくいってなくても仕事が進みます(そもそも、その場合、意思疎通ができなければ作業が進みません)。


こういう話を聞くと、世間ではいかにIT業界が海千山千の山師のような集団に思われているかが分かります。私自身は、実際にIT業界の人間と仕事はしたことがないのですが、同書に書いているような人間とは仕事はしたくないですね。
これで高い人件費を払うのだから、ほとんど詐欺ですね。
もちろん、真っ当に仕事をされているのだと思うのですが、ITバブルといわゆる「価値の創造」で必要以上に費用がかさんでいく気がします(ユーザにとって)。


SEにとってもユーザにとっても不幸な現状しかないですね。
本書は、SEの現状を鋭く明かした(暴露した?)本だと言えます。