活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

月光の遠近法・抄

錬肉工房の『月光の遠近法・抄』を見に行きました。2,3年前に公演した方は観られなかったので、今回は期待していました。



すべては上杉満代さんに尽きますね。
彼女が動くだけで彼女の世界が会場に広がるんです。しなやかな肢体が軽やかに舞う姿は圧巻です。人間の身体があれほどまで柔らかく力強く動くものだとは思いませんでした。
前回『風の対位法』も凄かったですが、今回は「声」を出したことに驚きました。もともと舞踏家である彼女は前回の公演では踊るだけでした。しかし、今回は呻き声のようなものでしたが、声を出した、そのことに感動を覚えました。


この感動はその場にいた人でなければ分からないのが悔しいですね。声を出した瞬間、彼女の世界がまた変わったんです。すでに一つの完成形を見せている彼女がさらに深化した、そのことに驚きました。


錬肉工房の公演を何度か見に行っていますが、今回は錬肉の持つ「場」の空気の密度が薄かった気がします。普段は狭い劇場で行っているせいか、あの圧倒的な存在感が感じられませんでした。
それでも充分に「場」を創り出していますし、普通の演劇とは明らかに違います。


岡本的、なわけですが、今回は舞台も照明も特に新しいことをしていなかったからでしょうか。上杉さんの凄さが際だって、舞台そのものは今まで見たものを越えるものではありませんでした。
それが口惜しいのですが、上杉さん一人で私は充分に満足な一日でした。