活字中毒の溺れる様の記

これは、よくいる活字中毒者が溺れ死ぬまでの記録である……なわけない(笑)

愚者たちに花束を


素晴らしい! これだけの質量と密度、そして加速度を持った小説は他にありません。
打海文三氏の作品は、文章の質量がまったく違います。
これだけの質量を持った文章を書ける人間を、私は他に知りません。


ただ、惜しむべきは2007年に他界されたことです。
この「応化クロニクル」はこの巻を持って終了し、結末が分からないことです。
戦線が信州や新潟に拡大し、暫定樹立政府も崩壊した状況で、どのような展開になるのか。非常に気になるところですが、もう見ることはできません。


打海氏は一貫して逆境に立ち向かう少年少女を描き続けています。
それがまるで彼の哲学であるかのように。
このシリーズに関しては非常に緻密で、しかも実地観察がよくなされています。私自身がよく知る地域も出てきて、「ああ、あそこか」と思わず風景が出てくるほどです。
これだけのリアリティーを見せつけられて、その面白さが分からない人はいないでしょう。
人間描写が丁寧で、しかも軍事・政治の動きもリアリティーがあります。
規律に従う人々と規律を破壊する人々。この対比が混沌を明瞭にしています。


ああ、この人の作品がもう読めないなんて。
日本は素晴らしい作家をまた一人失いました。


打海氏に黙祷を。